2012年12月1日土曜日

尊厳の芸術展

11月28日の午前8時頃、天気は薄曇りで小雨が降り出しそうにもかかわらず、空に大きな虹がかかりました。住宅街で、これほど大きくはっきりとした虹を見るのは初めてでした。ゆったりと大きな弧を描き、紫から青・緑・黄・赤へと光のプリズムのグラデーションは移りかわり、ただただ「美しい」という一言でした。自然の造形美は人間の創造をこともなく超えていきます。

 現在、東京上野の東京藝術大学大学美術館で開催中の「尊厳の芸術展」もとてもシンプルなメッセージを一言で伝えてくれます。それは「作ることは生きること」です。
  2010年アメリカのスミソニアン博物館で「THE ART OF GAMAN」として開催されたこの展覧会は大きな反響を呼び、日本での巡回展が決まりました。第二次世界大戦中、日系アメリカ人が強制収容所に収監されました。 それまで築き上げた財産も地位も奪われて、いつ終わるともわからない収容所生活が続く中で、廃材や自然の木々等を利用して作られた作品が展示されています。アーティストではない一般の人々が創り出したそれらの作品群は、「作ることは生きること」というそのメッセージを私達に強く伝えます。
  東京藝術大学大学美術館という会場で開かれ、また、入場料も無料なので多くの学生や若い方達にも見て欲しい展覧会です。芸術や創作についてあれこれ言葉を連ね、長々と文章を綴るよりも、心に響く言霊を私達に届けてくれる作品群であると思います。

2012年11月16日金曜日

一日刺繍クラスの作品


一日刺繍クラスで梅のキーリングを制作された方の刺繍が仕上がりました。
釜糸はご自分で好きな色を選んでいただきますが、梅の花をしっとりした紅梅色で、コロンとした蕾は可愛いらしく真紅で繍われました。「しべ」と「梅の花びらと蕾の輪郭」は「金糸のとじぬい」をしています。

一日刺繍クラスでは、その日に刺繍が終わらないときは、講師が残りを刺繍して仕上げます。しかし、この方は入会されて最後までご自分で梅の刺繍を刺したいというご希望でしたので、三回の講習で全てを制作されました。金糸の刺繍や花粉の「さがらぬい」なども大変だったようですが、終わったときは手応えを感じられていました。これから糊おき、湯のし等の仕上げを経て、キーリングのケースに入れます。ご自分で作った愛着のある小物になっていただければ嬉しいです。



2012年11月4日日曜日

作品を完成させるポイント! 額装のマットボード


 刺繍作品が仕上がった後、作品の本当の完成は作品を見せるディスプレイまで仕上がった時です。額に入れて作品を入れて仕上げる上で大切なマットボードのお話をしたいと思います。

 額に作品を入れて仕上げるとき、フレーム選びもいろいろと迷いますが、フレームと同じくらいに大切なものがマットボード選びです。マットボードとは、厚紙を窓のようにくり抜いたものです。
マットボードは、作品が直接額のガラス板やアクリル板に密着しないように作品保護のために入れます。またマットボードは作品と額の間に余白を持たせて作品に広がりを与え、作品を引き立たせます。

 ですが、たいていの方が悩むのは額とマットボードと作品のバランスです。私の日本刺繍教室の生徒さんもそれが一番お困りのようです。
マットボードを白やアイボリー、クリーム系統のような色目にするときは、幅の調整以外はそれ程迷うこともありませんが、色やテクスチャーのついたマットボードにしようとすると、作品と額の両方とのバランスをとることが急に難しくなります。

 作品を額装するためには、必ず額屋さんに作品を持参して相談します。作品の大きさ、加工上の大きさの余裕や作品の色と額の色などを実物で比較して決めます。
額を決めたら、次にマットボードのサンプルといろいろあわせて決めます。マットボードのサンプルも額屋さんにはものすごく多くの種類があります。マットボードにフチ金またフチ銀をつけたり二重にしたりすることもあります。

 またマットボードの幅も細いと貧弱になりますので、作品の大きさにあわせて決めます。
多くの方は額屋さんで打ち合わせをしながら額装をしたご経験がありませんので、私も日本刺繍教室の生徒さんと一緒に額屋さんに行って一緒に検討します。

イメージにあった額装ができるまで、こうした手間をかけるために時間はかかりますが、作品と額とマットボードがバランスがとれて仕上がった時、人にお見せできる完成形の作品になります。
こうして仕上がった額装作品は、中心の作品から、飾りひきたてる額のすみずみまで制作者の愛着のあるものになります。

テクスチャーをもったマットボードの例 (金糸を織り込んだ布地をはったマットボード)

上記のマットボードから作品を見せる窓をくり抜いた例

2012年10月26日金曜日

広告クリエーターが作った、心和むカレンダー



  「第4OACクリボラカレンダー展」が1031日から銀座三越で開催されます。
日本広告制作協会(OAC)所属の広告クリエーターらが、ボランティアで制作したカレンダー作品展です。

  東日本大震災の復興支援にOACとして何ができるか、直接、岩手県大槌町の被災地の方々にお話を伺った結果、一番皆さんが欲しいのは「がんばろう」と鼓舞する言葉や物ではなく、「心を癒やして穏やかにしてくれる何か」だったそうです。
そして、皆さんと一緒に考えて、得られた結論は「心和むカレンダー2013」を、仮設住宅に今なお、お住まいの方々全戸にお届けしようということでした。また、このカレンダーは大槌町のすべての集会所や談話室にも届けられます。

  カレンダーは作品を創ったクリエーター、審査員、版下・印刷を引き受けた方々、紙を提供された企業、作品展の会場を提供された百貨店と多くの想いが結集されたものです。
  62点のそれぞれ趣向を凝らした個性派ぞろいの作品の中から、高齢の被災者が多いこともふまえて、見やすく使いやすいユニバーサルデザインとしての配慮をしながら審査されました。
12カ月、それぞれの月ごとに優秀賞が決まり、その12点を合わせて2013年のカレンダーになっています。また、売り上げ金は全額被災地へ寄付されます。


OACのホームページの「第4OACクリボラカレンダー展」案内は以下です。
http://kuribora.oac.or.jp/4th_event/

会場:東京・銀座三越9階銀座テラス   
 日時: 1031()~116()  午前10~午後8(最終日は午後530分まで)   

大阪は11月下旬予定   町田小田急百貨店12月初旬巡回展予定  入場無料
OACクリボラカレンダー展の趣旨をカレンタ゜ー風にデザイン (OACクリボラ展ホームページより転載) 

最優秀賞の作品 (OACクリボラ展ホームページより転載)

2012年10月15日月曜日

スケッチブックが4年半、世界を旅しました



 一冊のスケッチブックが4年半で12カ国、71人のアーティストを巡って一冊の作品集が生まれ
ました。「スケッチトラベル」 です。それが絵本になって、飛鳥新社から出版されました。
初版は完売して入手できなかったのですが、重版が決まりようやく入手可能になりました!!

 このプロジェクトは、「トイ・ストーリー3」を手がけたアートディレクター堤大介さんがフランス人イラストレーターと2人で始めました。まず尊敬する絵本作家に無理を承知で依頼し、次にあこがれのアーティストのリストを作って参加を呼びかけていきました。スケッチブックは必ず、手渡しで回しました。いつの間にか木箱に収められたスケッチブックは、「最後はこの人に」と2人で決めていたという宮崎駿さんが、20111月に描きあげて完成しました。

 スケッチブックはチャリティーオークションで途上国に図書館などをもたらし、この日本版「スケッチトラベル」も、3150円の一部がNGOに渡ります。手元に届くのがとても楽しみです。

スケシッチプック (日本語版)
出版社 飛鳥新社
181p / 22×31cm
ISBN: 9784864101585


2012年10月14日日曜日

木彫で表現する超絶技巧の花々!  須田悦弘展



 本物と見紛うほどリアルな花や草の木彫で知られる、現代美術作家、須田悦弘氏(すだ・よしひろ)の展覧会が開催されます。千葉市美術館にて1030()から1216()です。
現代美術作家のなかで、特に好きな作家ですがなかなかまとまって作品を見る機会がなかった
ので、とても楽しみにしています。
添付の「芙蓉」の写真も木彫りの彫刻 ですが、生命を持っているように感じられ、本当に驚きます。

 これまで国内で何度も展覧会が開催されていますが、今までの中で最大級の展覧会だそうです。
須田悦弘さんを知ってから十年間たちますが、待ちつづけていた展覧会です。

  須田さんは、木彫り彫刻を究極までリアルかつ精巧に制作します。以前のインタビューで、「どこまで究極を追及するのか?、削ぎ落とした美はどう考えているのか? 」という質問を受けられました。
「自分でここが自分の持てる全ての技と感性の究極まで突き詰めたいが、究極の景色もまだ見ていないし、それを見てみたい。そこまで達したらはじめて削ぎ落とすという意識が生まれるかもしれないが、自分はそこまで達していない。」という趣旨のことをおっしゃられていました。

 私もデザインをするものの一人とてし、安易な簡略化ではない、デザインを削ぎ落とすことの本当の厳しさと、そこまで到達することの大変さを強く感じました。

千葉市美術館 須田悦弘展 URL
 http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2012/1030/1030.html

 YouTube動画 「現代美術作家 須田悦弘の制作風景」
http://www.youtube.com/watch?v=uQkYAY5UY-4

《芙蓉》2012年 須田悦弘氏 (千葉市美術館ホームページより転載)

2012年10月11日木曜日

日本刺繍による「源氏物語展」



105日から8日までTBSテレビの赤坂サカスで、Cool  Kyoto2012が開催されました。
京都の伝統工芸、京都から発信される最先端テクノロジー、映像技術、ソフト、京都のこだわり
食品やブランド食品等、京都で生まれた技術や感性が現在のライフスタイルに生きている「Meid in Kyoto」製品が一堂に集まった展示会です。
そのとき、写真でしたが日本刺繍による「源氏物語 五十四帖」を見ました。
日本刺繍協会( 京都市下京区) のアーティスト50人以上がそれぞれ一帖ずつ、3~4年がかりで仕上げた作品で、物語の詞書(ことばがき)も筆遣いや墨の滲みまで表現されています。
完成までに10年もかかった作品もあるそうです。
東京都美術館、京都市美術館で展示され、フランス・パリ・ユネスコ本部に招待出展して、絶賛を博した作品群です。五十四帖が揃った状景はとても圧巻だったと思うと、見逃したことがとても残念です。
1020日まで大津市の近江神宮近江勸学館で展示されているそうです。

2012年10月7日日曜日

お伽草子 -この国は物語にあふれている-

 室町時代から江戸時代にかけて大流行した「お伽草子」。浦島太郎、一寸法師、酒呑童子、百鬼夜行絵巻、鼠草子絵巻、ものぐさ太郎・・・ 等々を一堂に紹介する展覧会です。
 貴族の恋愛が中心だった平安、鎌倉時代の物語と比べて、笑いや恐怖などがあふれていて、「楽しみたい」展覧会です。
 ネズミ、スズメ、、カエル、古道具も主人公になっていて、豊かな想像力も見て楽しみたい一つです。
 京極夏彦のファンなので、「百鬼夜行」も見られる貴重な機会になると思います。

六本木・東京ミッドタウン ガレリア3階 サントリー美術館
9月19日~11月4日

http://www.suntory.co.jp/sma/index.html

2012年10月6日土曜日

3cm四方の小さな世界


刺繍教室では、着物や帯、半衿等の和装品や和装小物を主に制作していますが、友達のプレゼントにと、和装小物以外の小さな作品も作ります。

その中でも、キーホルダーやキーリングを作る方が多いので、それらの見本刺しを作りました。制作時間は帯や着物よりもずっと短いですが、その 3 cm 四方の小さな作品にも日本刺繍のいろいろな技が使われています。それぞれ、可愛い刺繍になりました。

これからもデザインの種類を増やしていきたいと思います。




「王朝のかたち」と 「室礼おりおり」


有職彩色絵師の林美木子さん

林美木子さんは、大和絵と呼ばれる伝統画法を描き出す絵師です。
以前、林美木子さんが制作する「貝覆い」の作品を拝見して、その雅な美しさに感動しました。
林美木子さんは、高校・大学で日本画を勉強されましたが、有職・歳時記・古典文学・伝統芸能 など様々な日本文化は生き字引きである父の林駒夫さんから学ばれたそうです。

林駒夫さんは「桐塑人形」を作られる人間国宝です。
その、林美木子さんが猪熊兼樹さんと共著で本を出版されたので、購入しました。
「王朝のかたち」ー宮廷文化を伝える風物たちー  淡交社  です。
日本刺繍の図案をデザインするとき、デザインに制約はありません。自分の好きなモチーフを使い、具象的なものから抽象的なデザインまで様々に展開します。

しかし、有職や日本古来の文様や模様を使うときは、それぞれに意味することがあるので、注意します。
以前、NHKのテキストに一年間連載された「室礼おりおり」で「菜の花は亡くなった子どもへ手向ける花を意味する」ことを知りました。
 「菜の花からは、菜種油が取れ、神仏に供える灯明に使われたから」だそうですが、確かに、菜の花を祝いや「ハレの日」の着物や装飾品に使っているのを見かけません。
 「菜の花文」という文様も同様に見かけません。

室礼では、額に和紙を人形 ( ヒトガタ )に切って飾り、菜の花を活けて「故人をひな祭りの宴にお迎えする」という意味を込めて「ひいなの供養」としていました。
室礼は、「室礼おりおり」 山本三千子  著 でNHK出版から出版されています。