2012年6月3日日曜日

21世紀の若き超絶技巧の職人 長谷川智彩! ★再放送6月6日

以前、截金 (きりかね)の記事で、江里佐代子氏を紹介しましたが、先日NHKの「極上美の饗宴」でボストン美術館所蔵の仏画「馬頭観音菩薩像」の復元をする截金師が紹介されました。
超絶技巧に挑む現代の第一人者として出演された方が長谷川智彩さん(はせがわ ちさい)でした。

この再放送はNHK BSで6月6日(水)午前8時~9時にあります。

1969年生まれの 長谷川智彩、こと長谷川幸子氏は、美術工芸高校を卒業後、当世の大佛師、松本明慶師に入門します。厳しい修業時代を経て師匠に「智彩」を名乗ることを許されて26才で独立。工房では親方として仕事の指示を与え、自分の持っている技術を弟子に伝え自分自身も制作に精進を続けている素晴らしい女性です。

以前にBS-TBSの「超人」 (あらゆる分野の超人たちの技に迫る映像ドキュメンタリー)で、取り上げられましたので、詳しくは、BS-TBSの「過去の放送」の#115 「一瞬前の自分を超える」 佛像彩色師/長谷川智彩(はせがわ・ちさい) (2008年1月27日放送)をご覧ください。


 「 智彩堂の朝、まず、仏の宇宙を描いたお経を読み、自分たちの目指す世界を確認する。」
静かで凜とした工房の空気の中で制作する職人さんたちの鼓動が聞こえるような気がしました。

日本刺繍の便利な道具: 型紙作りの道具

「型紙」とは、布に図からを染め付ける際に用いられる伝統的な道具で、紙を柿渋で加工した渋紙が使われます。
日本刺繍でも、図案を絹地に写す時に型紙が必要になることもありますが、私は渋紙ではなくステンシル・フィルムを使っています。ステンシル・フィルムは、紙と違って、伸縮や水分を吸って波打ちを起こすことがなく、非常に使いやすく耐久性があります。


また、ステンシル・フィルムを丸く切り抜くのに欠かせない道具の「丸きり」は京都の長谷川繪雅堂さんの「丸きり」を使っていますが、制作者が日本にただ一人になったと聞きました。
京都で300年も染色材料を専門で販売している長谷川繪雅堂さんでさえも、職人さんによる道具はなかなか入手困難になっています。

日本刺繍で使う針も、職人さんが一本一本手打ちで作り上げる「手打ち針」と、機械で作る「機械針」の二種類がありますが、その手打ち針を作る職人さんも非常に少なくなっているそうです。
 工芸の後継者不足と同じように、それを支える道具の職人さん不足もとても心配です。

KATAGAMI Style展



グーグル・アート・プロジェクトの記事でも紹介した「KATAGAMI Style展」に行ってきました。
「型紙」とは布に図柄を染め付ける際に用いる伝統的道具です。
東京展は5月27日で終わってしまったのですが、京都国立近代美術館、三重県立美術館での展示はこれからです。http://katagami.exhn.jp/


「世界が恋した日本のデザイン」とあるように、染色用の型紙は浮世絵と同様に型紙のデザインも欧米の芸術家たちの着想の原点となりました。桜の花が欧米ではアーモンドの花になっていたり、似通った別な物に置き換えられた図案もありましたが、やはり斬新な構図や色彩が驚きをもって取り入れられたことが伺えました。

アルフォンス・ミュシャのポスターやルネ・ラリックの宝飾品、ルイス・コンフォート・ティファニーのガラス工芸をはじめ、作品の中に日本独特の曲線や色彩を感じ、何か懐かしさを覚えますが、それでもそれらは欧米の芸術家の感性によって新たにデザインされた作品であり、日本趣味のリメイクデザインではありません。
私も一人の日本刺繍の工芸作家として、とても刺激されました。ですが、欧米の感性でデザインされたKATAGAMIをそのままなぞらえて再び日本刺繍のデザインにしても発展がありません。今の私達が持つ感性で「KATAGAMI」をリデザインした21世紀のKATAGAMI Styleを作り出し、図案にしたいと思います。と、志を高くもった次第です。

七宝に四つ花 (1796年) Kagami Styleホームページより転載
宝尽 (1738年)Katagami Styleホームページより転載

自宅で美術館! Google Art Project

  自宅にいて美術館の作品が見られる凄い時代になりました! ご存じの方も多いと思いますが、グーグル・アート・プロジェクト http://www.googleartproject.com/ja/では日本の美術館も含む世界中でこのプロジェクトに協力した主要な美術館の収蔵作品がインターネットで見られます。
  美術作品を実際の大きさで直接見た感動は、美術館に行かなければ得られません。けれど、美術館では、混雑した有名作品の前で、長時間画面すれすれに近寄って見ることなどとてもできません。しかし、インターネットでは驚くほど細かい描写のデーティルを拡大して見ることができます。横山大観の有名な「鶉」を拡大して見ると、小さなどんぐりの一つ一つの線の描写まで見えるのです。
現在 世界の151館3万点以上、日本の500点以上の作品が見られて、今後増えていくそうです。

また、先日三菱一号美術館で開催された「KATAGAMI Style」展に行った際、19世紀末の欧米芸術に影響を与えた日本の染めの型紙に魅了されました。
しかし、この素晴らしい型紙は海外に渡り、里帰りした時にしか目にする機会がありません。このグーグルアートプロジェクトによって 海外に収蔵されている工芸品も今後手軽に見ることができるようになるかもしれないので、楽しみです。



2012年6月2日土曜日

日本刺繍の図案作成しました

星美幸日本刺繍教室の生徒さんは、今年初めて刺繍をされる方から、10年目の方まで様々です。ベテランの生徒さんから図案デザインの要望がありました。
今まで習ってきた技を一つ一つ確認したいので、様々な繍技を使う図案をデザインして欲しいということでした。また、繍技の見本縫いを作りたいわけではないので、仕上がった時に作品として飾れるようにしたいと要望がありました。この模様にはこの繍技を使うということを考えながら、作品としての物語性を持つように考えてデザインしました。それが「養老の瀧花詰文様」です。

中心のカーブを描く青の線は組紐縫いで瀧を表しています。養老の瀧の物語はこういうお話です。
貧しい家の孝行息子が薪とりに行って、谷底に落ちてしまったのですが、近くに見上げるような瀧があって、それは水ではなく父の好きなお酒が落ちる瀧でした。孝行息子はひょうたんにお酒をくみ取り、急いで家に帰り父に差し出しました。父親はたいそう喜び、その話は天皇の耳にも届き、年号も養老に改め、瀧に養老の瀧という名をさずけたということです。

その民話から薪にする「しば」、お酒をいれた「ひょうたん」、朱色の盃、金糸で表現する岩を描きました。瀧を横切るようにして渡る橋は、金糸で表して画面に雅な趣を添えました。また「竹とふくら雀」の話も取り入れるなどして遊び心を取り入れています。たくさんの繍技を使うので時間もかかりますが、楽しく刺繍をして頂きたいと思います。