2013年10月20日日曜日

浮世絵を日本刺繍で模繍 - 上村松園

 上村松園(1875~1949)の代表作の一つ「雪月花」を日本刺繍で模繍していきます。貞明皇后の御用命を受けて以降、完成まで実に20年以上を要した力作です。

松園の渾身の作品であり、構図の一つ一つ、舞い散る花びら一つ一つまでも足すものも削るものも無い完璧な作品であり、それをできるだけ忠実に再現したいと思います。

  私が以前日本刺繍・紅会に在籍していた時に、私が依頼して「雪月花」の花を制作させてもらい、2010年の紅会の全国展にも出品しましたが、あらためて三部作を作り直したいと思います。

現在は宮内庁に収蔵されており、松園の展覧会では時々見ることができます。


            上村松園作 「雪月花」 左から「花」「月」「雪」

絵画、浮世絵を日本刺繍で模繍する際の著作権について

  浮世絵などの絵画の模写をするにあたって著作権、二次著作権の勉強をしたのですが、著作権のセミナーに参加する機会がありましたので、まとめてみました。セミナーでは、法律や裁判の判例などを交えて素人にもわかり易く説明して頂きました。以下は法律には素人の私が理解した内容ですので、法律上の判断は必ず著作権、知的財産権の専門の方にご確認ください。

  • 日本の法律では、絵画は著作権保有者の死後50年で著作権は消滅しますので、そうした絵画を日本刺繍で模写しても著作権の問題は発生しません。
  • 模写は新たな創作的表現が加えられたと客観的に認められない場合には,元の絵画に増減,変更等を加えても原画の単なる複製物であって、新たな著作物(二次著作物)にはならず、二次著作権は発生しません。

 日本刺繍で絵画は模写する場合、刺繍では下絵も含めて若干表現を変えざるを得なかったり、線の数を変更する必要がありますが、そうした細かな変更は新たな芸術的創作ではないので、二次著作ではない単なる模写になります。

 ですので著作権の消滅した絵画等を模写した刺繍作品を制作することに著作権の問題はありません。また、他の方が模写した作品が存在したとしても、同じ作品を模写しても二次著作権を侵害したことにはなりません。逆に他の方が私と同じ作品を模写てしも同じように二次著作権の問題にはなりません。


 作品制作では著作権は注意しなければならない大事な点ですので、しっかりと勉強しないとなりませんね。

浮世絵を日本刺繍で模繍 鈴木春信「めだか掬い」

 この一つ前のブログでご紹介しました同じく鈴木春信の「めだか掬い」を図案にしました。
これも日本刺繍で浮世絵を模繍します。

夏の小川で二人の娘が小魚取りに興じているという浮世絵で、涼やかな中に活発な楽しさのある作品です。たぶんそれほど有名な大作ではないのですが、絵柄が可愛らしく、夏らしく微笑ましい様子がとても気に入って、直観的に縫ってみたいと思った作品です。

明和4,5年(1767,1768年)頃の作品で、現在はシカゴ美術館など海外の数か所に所蔵されています。


鈴木春信「めだか掬い」 (1767~1768年作)

「めだか掬い」を模繍するための図案を作成しました

浮世絵を日本刺繍で模繍 鈴木春信「夜の梅」

 前からあたためていた浮世絵や絵画を日本刺繍で表現するアイデアを、あらためて制作し始めました。2008年に上村松園の雪月花の制作を始めたのですが、鈴木春信の2作品もあわせて制作することにしました。

 美人の浮世絵で有名な、江戸時代の浮世絵師鈴木春信の代表作「夜の梅」を図案にしました。これを日本刺繍作品として制作していきます。

鈴木春信は他の浮世絵作家と同じように謎が多い作家ですが、初作品が宝暦10年(1760年)に発表され、明和7年(1770年)まで活躍したと考えられています。

バックが黒一色の美しさと、黒の中に白梅と乙女の手灯りの対比がある、というシンプルに削ぎ落とした構図の美しさに惹かれて選んだ作品です。2002年に千葉市美術館で開催された「青春の浮世絵師 鈴木春信 - 江戸のカラリスト登場」という美術展で展示され、心に残った作品でした。明和3年(1766年)頃の作品で、現在はメトロポリタン美術館に収蔵されています。

鈴木春信 「夜の梅」 (1760年作)

「夜の梅」 模写図案 星美幸


釜糸を傷めずに運ぶための一工夫


釜糸を美しく保管する方法の続編です。

 日本刺繍を学ぶ生徒さんが、教室に行くときに何本か釜糸を箱に入れて運ぶと思います。
その時に、せっかく上下には動かなくなっても、箱一杯に釜糸が入っていないと、左右に釜糸が転がって動いてしまい、どうしても絹糸の表面がこすれて傷んでしまいます。

そんな事にならないように、絹糸を傷めずに運ぶための簡単な一工夫をご紹介します。


  1. 工作紙、ケント紙などの厚めの紙を一枚用意しします。
  2. 下の図①のように箱の高さが17mmだとしたら、箱の長さ + 30mmにカットして準備します。
  3. 釜糸を固定したい場所に15mm幅の折り目を3本つけます。
  4. 折り目にそって、15mmの高さの折り目を作ります。
     (箱の高さが17mmだとすると2mm程度の遊びができます。折り目の高さが高いと蓋が
    閉まりません。)
  5. できあがった厚紙を釜糸の箱に入れれば、これで完成です。もう釜糸は動きません。



釜糸が増えてきたら、下に引いた台紙を短くカットして、ちょうど良い長さにします。
(上の図では台紙の左側をカットします。)

釜糸の箱は、こうして運ぶのも便利な道具になります。










2013年10月19日土曜日

日本刺繍釜糸 色見本帳

 星美幸・日本刺繍教室で使っている釜糸は、全て写真に写された見本帳の釜糸です。
見本帳は、見ているだけでもとても綺麗ですよね。

色見本帳を広げた写真
  日本刺繍をされている方は、この見本帳をご存知の方もいらっしゃると思います。手作りホビー材料の大型専門店「ユザワヤ」の一部店舗や、ユザワヤのオンラインショップでも簡単に購入することができます。価格は4,725円(税込、送料別)です。1色ごとに色番号が書かれた400色もの釜糸が、実際に巻かれて、折りたたみ式のブック形式になっています。上の写真は、それを広げた様子です。

 私がグラフィック・デザインの仕事をしていた時は、デザイン、印刷の仕事で色を指定する時には必ず使われる「DICカラーガイド」という654色の色見本を使用していました。印刷では多くの色の種類が出せるでしょうけれど、絹糸で400色もの色の種類を揃えているのは凄いです。

 釜糸の注文は色番号でしますので、簡単で、糸問屋さんが販売しているからでしょうか、400色もの種類がありますが、在庫がきれたことがありません。1番から320番までは同系色に分類されて、321番から400番までは微妙なニュアンスの色が揃っています。
 糸屋さんと糸問屋さんが専門の仕事として、長い年月かけて作り上げた集大成というところでしょうか。

 近代絵画を日本刺繍で模写する場合や、図案にグラデーションをかける場合がありますが、そうした時には微妙な色の差を出すために、400もの色数があるのは本当に助かります。

 刺繍教室の生徒さんは、実際にこの見本帳を見ると、400色もの絹糸の光沢の美しさに驚かれます。見ているだけで飽きないと、おっしゃる方もいます。教室では、見本帳の購入を希望される生徒さんには、糸問屋さんから購入してお渡ししています。松戸馬橋教室には、この見本帳だけでなく、400色の釜糸を紙管に巻いて、分類された色見本釜糸があります。

色選びの際は、直接絹地にその釜糸を置いて、生徒さんと話し合いながら色を決めていきます。この色選びという作業は、時間はかかりますが、日本刺繍の制作過程の中では、重要で、そして、楽しいひとときだと思います。